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AFSK運用時のキャリア周波数とフィルターワーク

RTTYやPSK31を運用中に近接したところに信号やノイズがあるとデコードミスが発生します。他のモードでも同じようにこんなときはフィルターを使うことで回避できる場合が多くあります。無線機にもよりますがデジタルモード用にCWと共有でフィルターが準備されている機種もありますし最近の機種ではDSPにより自由な設定でフィルタをかけられるものもあります。
FSKでRTTYを運用している場合は、気兼ねなくフィルタスイッチを押せるのですがAFSKでRTTYを運用している場合やPSK31などでは無線機の機種や設定モードによってフィルタの効き方が違うのでちょっとやっかいです。
先日イベントでアイボールした局からAFSKでRTTYを運用していてフィルタを使うと目的の信号が消えるという話がでましたのでネタにさせていただきました。


結論を先に書いてしまえば無線機のモード設定によるフィルターの通過帯域の中心がソフトウェアのキャリア周波数と一致していないために起こるものでした。
ソフトウェアでキャリア周波数を変更するか無線機側で調整できるなら無線機の通過帯域中心を動かせばよいことです。

このネタを振ってくれた局のシステムは デジタルモードを設定できる無線機[FT-857]とMMVARIをAFSKでつないでいます。MMVARIのCarrierはRX/TXとも1500Hzに設定してあります。無線機にはCW用の500Hzフィルターが入っていました。

類似機種を私も所有していますのでデジタルモードでの通信を始めたばかりの頃に少し調べてみたので心当たりがあります。
せっかく持っているフィルタを設定がうまくいっていなくて使えないのはもったいないですし,コンテストなど近接した場所に信号がある場合などは狭帯域のフィルタを有効に活用して快適な運用をしたいものです。


まずは ネタをいただいた局と同類機種のFT-897でフィルタの効き方を調べてみました。

はじめは SSBモードの状態です。

右は FT-897 の標準フィルタの様子です。
左右のエッジがなだらかな弧を描いてSSBの帯域に広がっています。


FT-897 SSB Normal
次はは純正オプションのSSB用2.3KHzフィルタです。
上の標準フィルタに比べエッジ部分がいくらかシャープになっています。
電話の音はいくらか変わった感じがしますが、アクティブに混信除去をしている感じはありません。

FT-897 SSB Filter SSB-2.3KHz
3つ目は純正オプションのCW用500Hzフィルタです。
電話でここまで絞ってしまうとほとんど何を言っているのかわからなくなります。

帯域を狭めると帯域中心が約1500Hzあたりにあるのがわかります。

FT-897 SSB Filter CW-500Hz

次はデジタル通信用に準備されている DIGモード でのフィルタの効き方です。
ネタを振ってくれた局はこのモードで運用していました。

右側の画像は、本体標準設定時のオプションフィルタの状態です。
若干フィルター中心が上にシフトしていますが、広い範囲で信号を受信しています。

本体の設定を変更していない状態では、RTTY用に2000Hzあたりに通過帯域中心が設定されています。

FT-897 DIG(RTTY) Filter SSB-2.3KHz

それではCW用の500Hzフィルタを入れてみましょう。
帯域が狭まり周りの信号の影響がなくなりそうです。

ここでは通過帯域の中心に注目してください。
先の例では、MMVARIのCarrier周波数を1500Hzに設定していると書きましたが、右のフィルタでは1500Hzの信号がカットされてしまっています。これではフィルタを入れての交信は無理です。

この機種のDIGモードの設定は、設定を変更しない場合はRTTY-Lとなっています。フィルタを2200Hzあたりに設定しLSBサイドの信号を送信する様になっています。
この設定のまま運用するには、MMVARIのCarrier周波数を2200Hzあたりに設定しておく必要があります。


FT-897 DIG(RTTY) Filter CW-500Hz

MMVARIのCarrier設定

FT-897の DIGモード では運用するデジタル通信によって設定を変える仕様になっていますので、設定を変更してフィルタの効き方を比べてみました(この機能はメニューを呼び出しておこないます)。

下の2つは DIGモード の設定を変更して PSK31用とユーザー設定にしたものです。

PSK31では1000Hz、Userでは1500Hzあたりに通過帯域中心が設定されています。


FT-897 DIG(PSK31) Filter CW-500Hz

FT-897 DIG(User) Filter CW-500Hz
右は、ユーザー設定にしたままフィルタの効く位置をシフトさせてみました。
ユーザー設定にすると自由な位置にフィルタを効かせられるので使ってみるのも良いかもしれません。

同じようにフィルタの効く位置を動かす機能にIF-shiftがありますが、こちらは受信だけに影響しますので注意が必要です。

FT-897 DIG(User -1000Hz) Filter CW-500Hz

これで、ネタを振ってくれた局の疑問がとけたようです。
ここではFT-897をもとに説明しましたが、ほかの機種では使用するモードの違いやメーカーの思想によりフィルタの働き方が違うようです。

下では当局がよく使う IC-703 と IC-7000 のフィルタの効き方を示しておきます。
IC-703はクリスタルフィルタを使用していますがIC-7000ではDSPフィルタとなっています。


IC-703

この機種は、RTTYモードとデジタルモード通信用にDATAモードを搭載しています。
フィルタはオーソドックスなクリスタルフィルタです。
DSPフィルタを装備していますが、機能はノイズリダクションとノッチフィルタに限定されています。

内蔵できるクリスタルフィルタは1個だけなので、当局は500HzのCW/RTTY用のフィルタを入れてあります。


まずはSSBモードです。
左は本体標準のフィルタです。右は500Hzフィルターを入れてみました。狭帯域での中心は他機種と同じように1500Hzあたりにあります。
フィルタ領域外に盛り上がりがあるのは・・・ なんだろう?


IC-703 SSB Filter Normal

IC-703 SSB Filter CW-500Hz

右はRTTYモード時に500Hzフィルターを入れたものです。
中心は2200Hzあたりにあります。
このモードではFSKの運用になります。

IC-703 RTTY Filter CW-500Hz

右は、DATAモード時の500Hzフィルターです。
中心は1500Hzあたりにあります。

IC-703 DATA Filter CW-500Hz

最後にCW時の500Hzフィルターです。
CWピッチを600Hzにしてあるのでこのあたりに中心があります。

IC-703 CW Filter CW-500Hz

IC-7000

この機種は、RTTYモードを搭載していますがほかのデジタルモード専用の設定がありません。PSK31など音声入力での運用はSSBモードの運用になります。
また、フィルタはDSPフィルタになっており通過帯域とその中心を自由に設定することができます。


下の2つはSSBモード時の通過帯域の違いです。SSBの交信に影響しない程度にフィルタを効かせてみると上記のクリスタルフィルタに比べ切れの良い効き方をしているようです。

IC-7000 SSB Filter DSP-2.8KHz


IC-7000 SSB Filter DSP-2.0KHz

右は、SSBでのデジタルモード運用を想定して500Hzのフィルタを効かせてみました。標準状態では1500Hzあたりに中心があります。RTTYのAFSK運用やPSK31ではキャリアをこのあたりに設定すればそのままいけます。
JT65運用時は、JT65の基本周波数がもう少し高めなのでフィルタの中心をシフトさせた方が良いようです。

IC-7000 SSB Filter DSP-0.5KHz


右は、CW時のフィルタ位置です。
CWピッチは600Hzに設定していますのでここを中心にフィルタが効いています。

IC-7000 CW Filter DSP-0.25KHz

右は、RTTYモード時のフィルタ位置です。
FSKでの運用ですので、基本的には2200Hzあたりに中心がきています。

IC-7000 RTTY Filter DSP-0.25KHz


この測定は無信号時のノイズを WaveSpectra で表示させました。

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